私的な温泉旅のページ

旅館山河

ryokan_sanga

雑木林にひっそりと佇む

●宿「旅館山河」
 山河は、地蔵湯より西に1.5kmほど山道を進むと、木々の中に一軒だけひっそりと佇む、隠れ家の様な宿である。
建物は幾棟かに分かれていて、廊下で程よく繋げたり離れの客室としたり、雑木林の中に程よく埋もれる様に配置されており、それは宿の成り立ちに纏わる物語性を醸していた。
実際訪れてみて宿の庭に立つと、山里の廬の様であり、または茶室の路地庭の様でもあり、自然にもてなされている様な安らぎを感じた。
そしてこの庭に織り込まれるようにして風呂小屋や露天風呂が有機的に配されており、巨大ホテルでは絶対味わえない上質な時間を過ごせる様、作り込まれていた。
客室についてもその考えは貫かれており、露天風呂付きの部屋や、ウッドデッキに露天風呂を備えたり、洋室と和室を二寝室を備えたり、切石の部屋風呂が付いていたりと、多彩で変化に富んだ部屋をいく通りも揃えている。
 宿のホームページを見て感じるところだが、全客室の平面図や写真を掲載したり、女将が不定期だが歳時記を掲載したりと、現代的な手法であるが情報の上手な見せ方は期待が膨らむし、それに予約の際も互いにコンセンサスが取りやすい良い方法だと思う。
 話をにもどすが、宿が用意する風呂についても多彩で魅力的だ。まず内風呂「薬師の湯」は男湯は岩風呂、女湯は檜風呂、露天風呂が男女別に二箇所あり、貸切の六尺桶風呂、貸切の檜風呂、貸切の切石風呂、他に足湯小屋が露地庭内に点在し鬱蒼とした木々の間に埋もれる程であり、でも野放図に自然任せではなく、手間を掛けている事は理解できる。
この旅館が開業したのは昭和五十二年との事、その頃より地道に手がけた理想の露地庭を、露天風呂を、そして「山河」という銘に理想の湯宿を追い求めてきた四十余年の成果は、居心地の良さとして旅人達を持て成しているのだと確信した。