私的な温泉旅のページ

延楽

enraku
宇奈月温泉「延楽」
 富山市と糸魚川市のほぼ中間に黒部川の河口があり、内陸へ僅か20Km程の距離に宇奈月温泉はある。地形的に黒部川は中部山岳国立公園の中央を流れ谷を削り富山湾に注ぐのだが、山際の扇状地の愛本より4Kmほど奥に宇奈月温泉があり、一般車が乗り入れられるのは日帰り温泉施設「とちの湯」までで、黒部峡谷へは宇奈月からトロッコ電車にてアクセスすることになる。
 宇奈月温泉の歴史的背景については先に述べたが、利用者の増加に伴いどの宿も大型化しており街並みについては趣のある古い旅館建築が建ち並ぶ訳ではなく、山間の普通の町に中高層のホテルや旅館が十数軒ほど建ち、黒部峡谷観光の基地として、また冬はスキーリゾートとして温泉と日本海の海の幸に恵まれた食文化を楽しむことができる。
 今回(2009/07)お世話になった「延楽」は町の中程、黒部川沿いに建つ。
創業は昭和12年、宇奈月開湯と年を同じくする老舗旅館だ。今は鉄筋コンクリート8階建の建物だが、昔は広い敷地にゆったりと建つ木造二階建ての日本旅館で、和のもてなしを大切にした創業者により歴史を刻み始めた。
宿の歴史を見ると、芸術家や文化人もおとづれ、芸術に憧憬の深い創業者との親交もあり幾多のコレクションを持つに至るのだが、でも肩肘はるような高級旅館の程ではなく、もてなしや心配りはアットホームでありながら最良のものであったし峡谷観光のベースたり得る宿であった。
 そして今回予約した部屋は本館の標準+αタイプで、渓谷ビューが素晴らしく浴室も当然渓谷に面していて、男女入れ替え制の半露天の「檜風呂」と「岩風呂+ジャクジー」であった。
また最近は新たに機能やテーマの異なる4タイプの特別客室が作られ、各室に半露天風呂を組み込んだ今時の高級旅館のステータスを備える。
 最後に料理についてだが、料亭旅館の遺伝子を継承しており素材や水の良さが生かされ確かな技を感じた。
七月は富山湾名物の「白海老」の季節で、予約の際に勧められてこのコースにしたが、大正解であった。白海老は見た目は地味だが甘みと旨味が各料理を引き立てていて、懐石料理との相性が良いように感じたし爽やかな清水の様な趣の料理に仕上がっていて感動した事を未だに覚えている。